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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)804号 判決 1961年12月01日

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人新家猛、同坂野滋の上告理由第一点について。

原判決挙示の証拠を仔細に検討すれば、被上告人の代理人と称する原田善との間に、本件消費貸借、抵当権設定、代物弁済の諸契約をするにあたつては、論旨指摘のごとく、右原田の上告人を代理する権限の有無について、被上告人として疑念を挟むべき諸般の事情の存在したことが推測されるのであつて(殊に被上告人本人の供述の中には、訴外原田が上告人の代理人として被上告人に対してした話の内容から、原田が本人たる上告人らのための金融を申し込むと言いながら、他面、実は原田自身の訴外信太に対する債務の決済のための金融を依頼し、そのために他人である上告人らの本件不動産を担保に供せんとするのではないかということを、被上告人において推測しえ、少なくとも、原田の代理権限について被上告人として疑念を挟みえた事情の存したことが推測される。)、原判決がその認定にかかる事実関係からして、たやすく、被上告人において、原田の右代理権を信ずるについて正当の事由があつたものと判断したことは、到底審理不尽の違法あることを免れない。此点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄すべきものである。

よつて民訴四〇七条に則り、全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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